DX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、全社のデータを多角的に分析したり顧客とのコミュニケーションチャネルの改善を行ったりするためには、顧客データの統合が必要不可欠です。しかし、当然ながらデータを統合して活用できる状態にするためにはさまざまなハードルがあり、CDPを含め単に統合のためのツールを導入するのみでは実現できません。
今回は、データ統合やCDP導入におけるハードルとなる、プロジェクト推進前・推進時に知っておきたいポイントについてご紹介します。
目次
プロジェクト推進における前提
どのようなプロジェクトにおいても当然ではありますが、手段を目的化すると失敗します。多くの人がそのような前提は持っているかと思いますが、データの活用といったテーマになると、データを統合すること自体が目的にすり替わってしまうケースが少なくありません。
データを統合すれば何かできるのではないかということを起点にプロジェクトが立ち上がる一方で、データ統合後にどのようなシステムを利用して活用していくのかが考慮されていなかったり、活用するうえで統合の必要があるデータや、新たに取得できるようにする必要のあるデータが考慮されていなかったりするケースが多いためです。
前提として、データ統合後の具体的なデータの活用イメージを持ち、戦略立案およびプランニングを行うことがプロジェクトを成功させるために必要です。
顧客データ統合の主な目的
顧客データ統合は主に次のような目的で行われます。
- データの可視化による戦略の立案
- データの可視化によるマーケティング施策の評価
- メールやプッシュ通知配信のためのセグメンテーションの改善
- 既存サービスの分析ダッシュボード等のサービス提供
例えば、小売のビジネスを行っている企業であれば、店舗とECでバラバラになっている顧客データを統合することで上記の目的を実現したり、メール配信システムとプッシュ通知配信システムで異なるツールを利用している場合に配信リストや配信結果を統合することで上記の目的を実現したりします。
上記のような具体的な目的を設定するのと同時に次のようなもう少し大きい粒度でのデータの活用方法についても描いておくと良いでしょう。
- データの可視化
- 既存商品・サービスの提供価値向上
- 顧客体験観点でのコミュニケーション改善
- 新たなビジネスモデルの構築
広めのスコープから対象を限定することで中長期を見据えたシステムを選定するのか、現状見えている目的を解決できるシステムを選定するかといった違いが出てきます。
顧客データ統合プロジェクトの流れ
顧客データ統合のプロジェクトは次のようなステップで進むことが多いかと思います。それぞれのステップにハードルがあり、社内で進められる部分と外部のコンサルやシステムベンダーの協力を得ながら進めていくべき部分があります。
- 戦略立案
- 社内調整
- システム選定
- システム導入・開発
- 実行・運用
自社やグループ会社で開発組織を持っていない場合、特に3~4のフェーズにおいてシステムベンダーの協力を得る形で進める企業が多いかと思いますが、実は1~2のフェーズにてコンサルの協力を得たほうが良いケースが多くあります。
導入が進んだとしても、実行・運用していくところにも大きな壁があります。社内であらかじめ実行・運用のための社内リソースあるいは外部リソースを確保しておいたり、実行・運用のためのプランを立てる部分で初期はコンサルやシステムベンダーのサポートを受けたりといったことが必要になるケースがあるので、プロジェクト開始のタイミングで考慮しておくと良いでしょう。
戦略を絵に描いた餅にしないために
コンサルの協力が必要になってくる理由としてデータを統合しただけでは何も起きない点、またデータを使った戦略は広く描くことはできても実現可能性の低いものになりがちという点があります。戦略については各事業者が描くべきものですが、絵に描いた餅にしないために戦略の大枠が決まった段階で実現可能性の評価のためにコンサルを入れることはデータ統合プロジェクトの成功可能性を高めます。
顧客データ統合は事業部横断のプロジェクト
データを統合するということは、多くの部署が関係することになるため、システム選定が終わりいざシステムを導入しようとしたタイミングで、社内調整ができていないとプロジェクトの進行が停滞したり、本当は必要なデータの統合を初期の段階では統合を諦めたりという判断をせざるを得ない状況になる可能性があります。
システムを選定する前に次のような点が整理されていると、正しい選定が行えると同時にその後のプロジェクトがスムーズに進められるようになります。
- どこにあるどのデータを統合の対象とするか
- 各データをどのように紐付けるか
- データを保有している部署の開発リソースの有無
特に、2つ目の 各データをどのように紐付けるかという部分については技術に関する知識が必要だったり、そもそもデータが取得できていない部分に関してはどのようにデータを取得できようにするのかの検討が必要だったりするため、社内で判断しきれない可能性があります。
顧客データ統合におけるCDPの領域
データ統合においてCDPは、各種システムに存在するデータを集め、統合や分析処理をかけたうえで各種システムやツールに対してデータを連携する役割を持ちます。
- データ収集
- データ統合 / 分析
- データ連携
先ほど書いたようにデータ統合の対象となるデータ、それらのデータをどのように紐付けるか、また他のどのようなシステムに連携して活用するのかを明らかにしておくことで適切なCDPを選定できるようになります。
特にデータ収集とデータ連携の部分では、CDPがコネクタを提供しており開発不要で行える部分もありますが、連携といってもさまざまなの要件を満たさないケースがあります。単にコネクタがあるということのみでなく、要件を満たすか確認して進めるよ良いでしょう。
データを活用するためには、ただ単にデータを集めるのみでなく活用できる形の構造化されたデータを用意したり、集計したデータを用意したりする必要があります。
必要なデータの用意をCDPの提供している機能で実現できるか、一部SQLを書いたりすることで実現できるかといった点も考慮する必要があります。
さいごに
顧客データを統合することで、顧客に対して提供できる価値の向上やそれに伴いビジネスにおけるインパクトが得られるようになりますが、良い形でプロジェクトを推進できないと失敗体験となってしまい会社として顧客データの活用や攻めのDXにおける取り組みがしづらい土壌ができあがってしまうのもまた事実です。
大きな目標の設定と小さな成功体験を積み上げることによって、顧客データ統合・活用のプロジェクトは推進できます。
CDP INTEGRAL-COREを提供するエバーライズでは、攻めのDXを支援するデータソリューションアーキテクトとして、ビジネスプランに対するシステムによる実現可能性や構成の提案を含めたコンサルティングや技術選定支援、INTEGRAL-COREを含めたCDPの導入支援および周辺開発、運用時の技術的サポートを行っています。
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顧客データ活用に取り組みたい、顧客データ活用でお困りごとがある場合はお気軽にご相談ください。