ホテル・旅館業界のデータ活用

ホテル・旅行業界では、OTA依存による利益の圧迫や、顧客が多数の情報を持ってホテル・旅館を選べる状況によるリピート率改善の難化などの課題が大きくなっています。

さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、客室の稼働率が大幅に低下するという状況も重なっています。ただし、ワクチン接種も浸透し宿泊需要の回復が期待できる状況になってきていることから、改めてホテル・旅行業界における課題に取り組むべきタイミングであるとも言えるかと思います。

本記事ではホテル・旅館業界の3つの課題と解決策、CDPによるデータ活用について紹介します。

ホテル・旅館業界における課題

ホテル・旅館業界における主な課題は3つあります。

OTA手数料による利益の圧迫

ホテル・旅行業界において、OTA集客での予約が大部分を占めていることにより、集客コストが大きくなってしまい利益率が圧迫されていることは大きな課題として挙げられます。

ユーザーとしては、ホテル・旅館を調べる際にOTAを利用するのは一般的になっていることから、単にOTAへの掲載を止めてしまうと、客室稼働率の観点で売上が下がり利益とのバランスがとれないケースも多いかと思います。

OTAへの掲載を止めるのではなく、適切なバランスをとりにいくホテル・旅館における集客のOTA”依存”からの脱却は、ホテル・旅館業界において大きなテーマとなっています。

一方で、昨今の状況としてOTA依存による利益の圧迫以前に、新型コロナウイルス感染症の影響によって国内観光とインバウンドの宿泊需要は大きく低迷し、厳しい状況が続いています。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2020年の延べ宿泊者数(全体)は3億480万人泊で、前年比の – 48.9%でした。また、ビジネスホテルの宿泊需要においても、テレワークの浸透で出張が減少し、2020年のビジネスホテルの客室稼働率は42.8%で、前年比の – 30.0%でした。

現在、ホテル・旅館業界は需要が低迷している中でも、売り上げを立てて生き残っていくために、OTA(Online Travel Agent)での集客を積極的に行い稼働率を高める戦力にシフトしているホテル・旅館は多いかと思います。今後も新型コロナウイルス感染症の影響が続き、OTA集客の厳しい価格競争があり、ホテル・旅館業界は苦戦を強いられてますが、ワクチン摂取も浸透しつつあるため、旅行者数も徐々に戻ってくることによって徐々に稼働率が回復していくのが期待されます。

非常に難しいバランスではあると考えられますが、旅行需要の回復をみてOTA依存の脱却に向けたアプローチは検討を進める必要があると考えられます。

既存顧客のリピート化ができていない

安定した収益を生み出すために、既存顧客に継続的に利用してもらうことが重要です。出典が不明ではありますが、マーケティングや経営戦略を語る際に、しばしば引用される「1:5の法則」より、新規顧客の獲得コストは、既存顧客を維持するコストの5倍ものコストがかかると言われています。

そのためホテル・宿泊業界は既存顧客に対して、どのようにアプローチしていくかが重要ですが、現状存在する顧客に対してリピート促進できていないケースが多くあります。

既存顧客に対して、効率良くリピート促進ができていない主な原因は、予約情報、顧客情報、ポイントカード情報、POS情報などがバラバラで、顧客の属性が見えていないことが挙げられます。単に一斉配信のメールなどによる情報提供ではなく、顧客の状態に合ったコンテンツを提供できないと効率よくリピート化に繋げることは難しいでしょう。

データをもとにした、ホテル利用時・旅行中の顧客体験の向上ができていない

宿泊中の関連施設やサービスの紹介が、チャックイン時にコンシェルジュが顧客にお声がけを行ったり、パンフレットをお渡しするだけにとどまっているケースが多くあります。

データをもとにした、旅行中の状況に適した施設やサービスの提案や接客、オンライン・オフラインも含め、顧客に喜ばれるコミュニケーションを行うことで顧客体験が向上し、顧客のロイヤリティ化にも繋がります。

ホテル・旅館業界における課題の解決策

直接予約による新規顧客の獲得

予約が大部分を占めているOTAの集客を引き続き行うことも大切ですが、自社の直接予約を強化する集客経路の獲得にも取り組んで行くことも重要です。自社の直接予約を強化するためには、新たな集客経路の獲得とブランドの構築が重要です。

幅広い客層に認知してもらうために、自社のSNSやブログ発信などを積極的に行ったり、広報活動によるメディア掲載を狙ったり、メディアの広告枠の利用など、OTA以外の新たな集客経路を獲得することが重要です。

しかし、単に集客経路を増やし、露出したとしても競合他社と差別化したホテル・旅館の強みを主張できるブランド構築が行えていなければ大きく予約が増えることは期待できません。顧客から共感を得るブランディング戦略を練り、それらをもとにした集客の戦略を練る必要があります。

直接予約を引き上げるためにまずwebサイトの改善を取り組むというケースもありますが、あくまでブランディング戦略と集客戦略をもったうえで進める必要があります。

サイトに来た顧客が予約まで到達するように、ホテル・旅館に対して興味を持ってもらえるサイトとなるよう見直しましょう。例えば、宿泊をイメージしやすいサイトデザイン、シンプルなサイト設計、予約率が上がる導線設計、シーズンごとのアクティビティなどがイメージできるコンテンツの拡充などを行います。また、自社サイトからの予約した際の特典など付けるのも効果的です。

直接予約経由で溜まった顧客データをもとに、どのような属性の顧客がサイトに訪問していて、どのような行動をしているかを分析し、顧客理解を深めつつ、最適なプロモーションを実施できるよう改善も行うことも大切です。

リピーターを増やす施策

宿泊してくれた人に「もう1度このホテルに泊まりたい」と思ってもらうために、ホテル・旅館の魅力をアップさせるとともに、顧客などの状態に合わせた適切なコミュニケーションを行うことが大切です。

予約前では、何度か宿泊をしたことのある優良顧客と、休眠復帰を促したい顧客のコミュニケーションを分けるとよいでしょう。

休眠復帰の難易度は高く、休眠する前に再利用を促す、つまり休眠しないようなコミュニケーションが重要です。一般に、休眠顧客はコストメリットなどわかりやすい訴求でないと復帰しない傾向にあるため、利用後にお得な情報を提供して再予約を促進しましょう。

何度か足を運んでいただいている優良顧客に対しては、各シーズンで旅行を検討する時期に再予約・利用を促進するコミュニケーションを取りましょう。訴求内容はさまざまありますが、例えばゴルフ、温泉、地域のイベント、シーズンごとのアクティビティ、季節の料理などを組み合わせて何種類か訴求を作り、顧客の属性に合った訴求を行い、再予約を促しましょう。

予約完了後も、ホテル・旅館を利用する楽しみを醸成するとともに、他の施設やサービスの予約・利用を促進することも忘れずに行いましょう。

データをもとにした、ホテル利用時・旅行中の顧客体験の向上

宿泊前にホテル・旅館を調べるお客さんは多いかと思います。顧客が事前に自社サイトで調べていてた興味関心の高い関連施設やサービス、顧客の属性にあったアクティビティを宿泊中におすすめすることで顧客体験を向上させられます。

例えばチェックイン時に、コンシェルジュからホテル・旅館からおすすめしたい施設やサービスを紹介するケースは多くあると思いますが、すべての施設やサービスを紹介することはできないため、事前に関連施設やサービスの予約の有無など顧客の興味関心の高そうなデータが特定できていれば、より効率的に利用促進を行うことができます。

コンシェルジュを介して紹介する以外に、宿泊前・チャックイン時にモバイルアプリをダウンロードしてもらい、アプリでショップ来店を検知したタイミングでおすすめ商品情報の紹介やクーポンをリアルタイムでプッシュ配信を行うことで、購入促進を行うことができます。

ホテル・旅館業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ活用

顧客データをもとに顧客理解を進めたり、顧客スピーディーかつより正確コミュニケーションを行うためには、顧客データ基盤を整える必要があります。顧客データ基盤は自社で構築することも可能ですが、その顧客データ基盤として、CDP(Customer Data Platform)も1つの手段です。

CDPとは「カスタマーデータプラットフォーム」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し、顧客一人ひとりを理解するための基盤のことです。

▼CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは?メリットや活用例も紹介

顧客情報を一元化

CDPは、名前やメールアドレスなどの個人情報、webサイトやアプリでの行動履歴、POSレジの購入履歴、宿泊後のアンケート情報など、顧客に関するすべてのデータを収集し「実在する個人」にデータを紐づけて顧客データを一元管理できます。

たとえば、webサイトやSNS、メルマガ、アプリなどそれぞれのチャネルごとに顧客管理システムを持っており、1人の顧客に対して別々の顧客IDを割り振り、別人として管理されているケースが多々あります。このようにデータがシステムやツールごとに分断されて管理されている「データのサイロ化」が起きているケースは多く見られます。

▼サイロ化について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
攻めのDX推進を阻害する”データのサイロ化”の問題と解決方法

CDPを導入することで、IDを1つにして複数のチャネルで収集した顧客データを統合できます。1人の顧客として分析できるようになり、オンラインとオフラインを融合させることができます。

顧客との適切なコミュニケーション

CDPは顧客データを一元管理できるうえに、分析・施策を行うツール(BIツールやMA、プッシュ通知、web接客ツールなど)に連携でき、分析した結果をもとに顧客に対して適切にアプローチしていくことが可能です。

CDPを導入し、セグメントを分けて顧客に対して適切なコミュニケーションを図ることで、売り上げアップや機会損失を最小限に抑えられます。

まとめ

ホテル・宿泊業界の顧客データ活用について紹介しました。

EVERRISEでは、CDP「INTEGRAL-CORE」の提供のみでなく、その前段階のデータ活用基盤構築のためのコンサルティング、自社の基幹システムを含めた各種システムと連携を行うための開発も行っています。

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