「簡単にモノが売れない」時代を生き残るには?〜LTV向上のための小売業のデータ活用術〜

近年では、日本の小売業界は「モノが売れない」時代だと言われています。果たして、それは本当でしょうか?

経済産業省「商業動態統計調査」によると、日本全国の2020年の小売販売額は前年比1.0%増と微増の傾向がみられます。ここ10年の推移をみても、ほぼ横ばいではありますが、減少傾向は見受けられません。しかし、詳細を見てみると売れ行きが良い企業と伸び悩んでいる企業の差が激しく、実際には「簡単にモノが売れない」という状況が生み出されています。

小売業界の抱える課題「簡単にモノが売れない」という状況の背景には何があるのか。背景を理解し、解決のためのアプローチを実現、後に経営戦略に生かすことでLTVの向上にも繋がり、強い競争力を得られることでしょう。

本記事では、小売業界の課題の背景に触れながら、課題に対するアプローチについて紹介します。

小売業で「簡単にモノが売れない」と言われる背景

ライフスタイルと共に多様化するニーズ

テレビCMなどのマスでの情報発信自体は、現在も強力なチャネルの一つです。しかしデジタルの普及により顧客個人が自ら情報を取りに行ける時代となっているのも事実です。大量消費やモノが良ければ売れるという時代から、顧客がそれぞれに自分にあったものを自ら探し、検討し、購入するという時代へシフトしています。

ライフスタイルも多様化し、顧客の求めるニーズも多様化してきています。すべての顧客に対して同じメッセージを届けたり、同じ訴求をしている状態のみでは、売るということが難しくなっています。

情報量の増加


引用元:総務省

近年、人々が取得する情報の量は爆発的に増えています。総務省は「令和2年版情報通信白書」を通し、一定時間内にネットワーク上で転送されるデータ量を表す「データトラヒック」が2018年から2019年にかけて15.2%増加していると発表しました。背景には、インターネットの定着を基盤に、スマホの普及、5Gなどの通信環境の改良、SNSの流行などがあげられるでしょう。新型コロナウィルスの影響で生活環境も変わり、この結果はますます右肩上がりに伸びることが想定されます。

トラヒック量の増加から人々が取得する情報量の増加と同時に、提供される情報自体も爆発的に増えていると言えます。数多ある情報の中から的確に顧客へ情報を届けるためには、適切なコミュニケーションからの関係構築が重要になってきます。単純に発信する情報を増やしたとしても顧客との関係が構築されていなければ、大量に交わされる情報の海の中へと埋もれてしまい、顧客には届かずに終わってしまいます。本来獲得したかった顧客には利用してもらえず、既に利用している顧客は離れていってしまうかもしれません。

顧客を理解し、適切なコミュニケーションを図り、常に自社の情報を受け取ってもらえる関係を築いておくことが必要です。

ECサイトやモールなどのオンラインショップでの購入率増加

2020年7月に経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2019年EC(BtoC)の市場規模は19.4兆円と、前年の2018年と比べても7.65%増と拡大しています。2020年の発表は現段階ではまだされていませんが、コロナウィルスの影響もあり、増加していることが予想されます。

インターネット経由販売にも、自社のECサイトやAmazon、楽天などのモール型のオンラインショップなど手法は多岐に渡り、目的にあった選択が求められています。

実店舗の在り方の変化

では、ECサイトやモールなどのインターネット購入に重きをおけば良いかというと、そうとも言い切れません。2019年にトランス・コスモス株式会社が発表した「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2019」によると、「ショールミング」または「ウェブルーミング」を行っていると回答したユーザは80%を超え、どちらも行っていないと回答したユーザを大きく上回っています。

ショールーミングとは、実店舗で商品の実物を見た後でインターネットを経由して商品を購入する購買行動のことであり、ウェブルーミングは、商品の情報をウェブで検索して価格やレビューを調べた後に、実際の店舗に訪問して商品を最終確認し、店頭で購入する購買行動のことを指します。
この結果からも購入する場所としてあった実店舗が、ショールームの役割も担うようになってきています。

ECサイトの売り上げ向上や実店舗の在り方の変化を加味し、今後は価格を含めて店舗やECサイトなどの各種接点において、一連の体験を顧客に提供できる設計を行う必要があります。この設計が上手くいかないと、より良い体験を提供している競合他社に顧客は流れてしまったり、手軽に利用できるモールでの購入が増えてしまったりと、競争力の低下に繋がってしまいます。

「モノが売れる」ためのアプローチ

顧客一人ひとりの理解

「ライフスタイルと共に多様化するニーズ」には、【顧客一人ひとりの理解】という解決のアプローチがあります。

顧客を大きくカテゴライズするのではなく、一人ひとりに対してコミュニケーションを行う1to1マーケティングの考え方が重要になってきます。1to1マーケティングを実現するためにはまず、顧客一人ひとりの情報を可視化し、把握できる状態にするというアプローチが必要なります。

顧客との適切なコミュニケーション

「情報量の増加」には、【顧客との適切なコミュニケーションを行う】アプローチがあります。膨大な情報が飛び交う中で、自社の情報をきちんと顧客に届けるためには、顧客に適したコミュニケーションを継続的に行える状況を作ることが重要です。

しかし、顧客を理解できていない状態でむやみやたらにメールマガジンを配信すると、その他の情報に紛れてしまい顧客に伝わらないのみでなく、顧客との関係が途絶えてしまう可能性さえ存在します。顧客を「個」として捉え、それぞれ適切なタイミングで情報を提供する必要があります。

また、現在では手段についても考慮が必要になってきています。かつては、プッシュ型のコミュニケーションとして、オフラインであればダイレクトメール、オンラインであればEメールといった手法が中心でした。しかし、昨今では、モバイルアプリのプッシュ通知や、LINEなど手段が増えており顧客が求める手段を提供することも重要です。

オンライン店舗とオフライン店舗の共存

インターネット経由の販売の増加や実店舗の在り方の変化などの「販売環境の変化」には、【さまざまな販売経路への対応】【一連の体験の構築】というアプローチがあります。実店舗とオンラインストアの役割を適切に定め、顧客にとって良い体験を提供できる環境構築が重要になってきます。

しかし、ECサイトを店舗の1つとして捉え、自社内で競争関係を作る体制になっている企業は少なくありません。顧客にとってはECサイトと実店舗というのはチャネルの違いに過ぎません。詳細なスペックを確認したり比較したりする上では、オンラインサイト。実際に商品を見て、質感やサイズ感を確認する上では実店舗といった、目的別に使用するケースが増えています。オンラインとオフラインを分断して考えるのではなく共存させ、顧客に一連の体験として構築しておくことが、LTVの向上においては重要です。

データを活用したアプローチを成功させる鍵

小売業界で「モノが売れる」状況を作るためのアプローチとして、「データ活用」が重要です。実際に活用していくためにはどんな準備が必要なのか。ここからは成功のための鍵をご説明していきます。

データの可視化

「顧客を理解する」ためにはまず、データを可視化する必要があります。ECサイトの訪問履歴や購入履歴、アプリからのお気に入り登録、オフライン店舗の来店状況など、様々な情報を取得することができるかと思います。しかし、データを集めるだけでは、顧客理解にはつながりません。データを可視化することで、顧客の動向やニーズを把握することができます。また、メールやLINEなどのコミュニケーションに対する顧客の反応も可視化し、最適なコミュニケーションに繋げましょう。

データを可視化するにあたり、そもそも必要な情報がデータとして取得できていないケースがあります。その際は、データを取得する方法から考える必要があります。

顧客一人ひとりを紐付ける

「顧客一人ひとりの理解」「顧客との適切なコミュニケーション」を実現させるためには、所有するデータから「個人」がわかる状態する必要があります。データがあったとしても顧客単位で紐づけられていなければ、実際は同じ人物が行った行動でありながらもデータ上では別の人物として認識し、顧客を正しく理解できなかったり誤ったコミュニケーションを行ってしまったりという可能性があります。

顧客情報を紐づけるためのキーとなる情報(例:メールアドレス,会員ID 等)が既に存在しているのであれば、それを基に統合を進める必要があります。

データの一元管理

「オンライン店舗」と「オフライン店舗」を共存させるためには、それぞれ保有している会員情報や売上情報のみではなく、商品に関わる会社全体のデータが一元管理されている必要があります。データがシステムや部署ごとに分断されて管理されている状態をデータのサイロ化と呼び、ボトルネックなるケースが多く見られます。

▼サイロ化について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
攻めのDX推進を阻害する”データのサイロ化”の問題と解決方法

店舗の会員システムとECで会員のデータが別れていたり、カスタマーサポートが利用している顧客管理のシステムとマーケティング観点でのメール配信等を行うシステムが別れていたりシステムごとにしかデータが利用できていないケースが多く存在します。

また、製造・開発を行うチームに対するフィードバックとして、商品ひも付きの売上に関する情報やカスタマーサポートに上がってくる情報を提供しようとした際、システムごと、事業部ごとにデータが管理されてしまっていると、利用することができません。このような状態を避けるためにも、会社全体のデータの一元管理が求められます。

アプローチの手段の一つに、CDP

CDPとは

CDPとは「カスタマーデータプラットフォーム」の略称です。企業の顧客に関するデータを一元管理し、顧客ひとりひとりを理解するための基盤です。

▼CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは?メリットや活用例も紹介

CDPにできること

CDPで行えることはデータの「収集」「統合」「連携」です。オンライン・オフライン問わず、顧客に関するデータを収集し一元管理が可能です。例えば、実店舗で利用しているポイントシステム等に紐付いており顧客の情報として扱うことができるID-POSのデータ・ECサイトの閲覧履歴や購入履歴・会員情報などを収集し、管理できます。

次にデータの統合が可能です。実店舗とECサイト、システムごとに別の顧客として管理されていたデータを、共通のキーとなる情報を基に一人の顧客として管理できます。

最後に、データの連携が可能です。顧客を理解するための、BIなど分析ツールとの連携や顧客と適切なコミュニケーションを行うためのMAやメール配信、プッシュ通知配信などのツールと連携が可能です。

CDPがもたらすメリット

顧客に関するデータの一元管理

CDPを活用することで、オンライン・オフライン問わず顧客のデータを一元で管理することができます。また、開発やマーケティング、営業店舗などの部署によるデータの個別管理、分断をなくし、データのサイロ化を解消します。

データの可視化

CDPに集められた顧客データをBIツールなどと連携し、分析し、可視化することができます。データが見える化されることにより、戦略の立案や意思決定、効果測定に利用することができます。

顧客との適切なコミュニケーションの実現

CDPに集められ統合されたデータを用いてセグメントすることで、顧客ごとに適した情報の提供することができます。例えば、ECサイトにおいて、ECサイトでの購買情報をもとにした値下げ通知のメールを送るような施策を行っているとした際、実店舗で既に購入したユーザーにとっては、がっかりさせてしまうようなコミュニケーションになりかねません。店舗とECサイトで横断した購買情報をもとにしたセグメントを作成することで、そのようなコミュニケーションを防ぐことが可能です。

▼具体的なCDPを導入する時の注意点や選定ポイントについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
CDP導入時の5つの注意点と必要な準備
CDPのメリットと失敗を回避するツール選定のポイント

まとめ

小売に携わる事業者にとって、商品が売りづらくなっている現状は大きな課題として存在します。それらを解決するアプローチとして顧客を理解して、1to1のコミュニケーションを行っていくことが重要です。そのために、データを用いて分析や施策の実施を行うことが適切なアプローチの1つとして存在します。

そのアプローチを行ううえで、CDPは有効な手段として考えられます。ただし、顧客データの活用は手段であり、目的化するのは危険です。あくまで、目的の達成に向けて適切な課題を設定し、どのような施策を行っていくかを含めていかにしてデータを活用するかを重点に考えていきましょう。

EVERRISEでは、CDPを利用したLTV向上の支援を行っております。CDP INTEGRAL-COREの提供のみでなく、コンサルティングや周辺開発も行っています。お気軽にご相談ください。

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